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2020.11.18

介助技術 移乗について

移動は高齢者に関わらず人間が何かをしようとする際に必要となる動作です。

例えば、食事をするためにテーブルに行くことやお風呂に入るために浴室に行くといったことがそれにあたります。そして、介護サービスを利用する高齢者が移動をするためには車いすやベッドなどへの移乗介助を必要となるケースが多いものです。
しかし、移乗介助は介助者である介護職員の体に負担を与えてしまうという側面をもっています。厚生労働省が発表している資料「社会福祉・介護事業における労働災害の発生状況」によると、福祉施設などで働く介護職員の腰痛が増加しているというデータがあり、移乗介助が腰痛の要因のひとつとして考えられています。
今回の記事では最近の移乗介助をとりまく状況を踏まえながら身体への負担を減らし腰痛を予防できる移乗介助の基本についてお伝えしていきます。

移乗介助をサポートしてくれる福祉機器の進化と充実

最近の移乗介助についてお話しするうえで外すことができないのが移乗介助をサポートしてくれる福祉機器の存在です。
介護現場では人材不足によって業務負担の増加が進んでおり、これらの機器をうまく活用し身体にかかる負担をいかに減らすことができるかが重要と言えるでしょう。国も福祉機器の導入をサポートしており、人材確保等支援助成金という名前で需給の要件や補助される金額に上限はありますが介護施設などへの福祉機器の導入を促しています。
どのような福祉機器があるのか知っておくことで知識を広げるだけでなく職場選びにも役立ちます。興味のある方はインターネットや介護施設に出入りしている福祉用具の業者などに性能や使い方を確認してみてください。

介護職員の中には「福祉機器を使わずに自分でしたほうが早い」と考える方もいるかもしれませんが、今後はさらに介護職員の業務負担が増えていくことが予測される中で自身の身体と利用者さんの安全を守るためには福祉機器の活用は避けては通れないのではないでしょうか。
福祉機器を正しく扱えるかどうかも介護職員にとって必要な移乗介助の技術と言える時代になってきていると言えるでしょう。

移乗介助のやり方「ボディメカニクス」の活用

福祉機器の扱いに加えて必要なのが従来通りの介護職員が身体を使って行う移乗介助の技術です。
福祉機器は大変に便利ですが購入するには多額の費用が必要となるので欲しいものが必ずあるとは限りません。ましてや、訪問介護やデイサービスの送迎時など利用者さんの自宅で移乗介助をする場合には使うことができる福祉機器は限られてきます。やはり、自分の身体を使った移乗介助の技術は身につけておく必要があります。

移乗介助の技術はさまざまなものがあり、最近ではインターネットの動画などでもそのやり方が紹介されていますが、今回、お伝えするのは移乗介助の基本とも言える「ボディメカニクス」についてです。
ボディメカニクスについては介護福祉士実務者研修でも取り上げられるくらい重要視されており、その効果は期待できるものなので介護職員として働くからにはぜひとも身につけておくことをお勧めします。

「ボディメカニクス」8つのポイント

①支持基底面を広くする
介助者は移乗介助をする際に身体を安定できるよう介助の動作に応じて足を前後左右に広く開きましょう。
※支持基底面とは、足と床の接しているところの面積のことです。これを広くとることで立位の姿勢は安定します。

②利用者さんと介助者の重心を近づける
人間の重心の位置は姿勢により異なりますがおおむね腰の中心あたりにあり、移乗介助を行う際にはお互いの重心を近づけることで移動の方向がぶれることが減り力を効率的に利用することができます。例えば、移乗介助で行う機会が多い利用者さんに座位をとってもらった後に行う移乗介助は介助者の腰と利用者さんの腰を近づけることで重心を近づけることにつながります。

③大きな筋肉を使う
移乗介助に使う筋肉は自身の身体にある大きな筋肉を使うことを意識しましょう。大きな筋肉とは腹筋や背筋、大腿四頭筋などです。大きな筋肉ほど強い力をだすことができるのでこれらの筋肉を組み合わせて使うようにしてください。

④介助される方の身体を小さく球体にまるめる
利用者さんの体をできるだけ丸い球をイメージしながら小さくすることで介助者が加える力を逃がさずに済みます。具体的には腕を胸の前で組む、膝を曲げる、頭を起こしてもらうなどです。

⑤移動は重心ごと動く
移動する際には重心を低くして重心ごと動くようにしましょう。例えば、車いすからベッドへの移乗介助であれば車いすの座面とベッドの高さに差がでないように調整をした後、利用者さん座ってもらい、自分の重心を利用者さんの重心である腰のあたりへ無理のない範囲で下げて抱えこみ互いの重心ごとベッドに移ってもらいます。

⑥介助者の身体をねじらない
移動介助の際には身体をねじる動作をしないようにしてください。ねじる動作とは足先が向いている方向とは違う方向に上半身を中心に向く動きのことです。この動作は姿勢が不安定になり腰痛の原因となるので注意してください。

⑦押すよりも引く
ベッド上などで利用者さんの移動をする際には押すのではなく引く介助をするようにしましょう。引くほうが利用者さんとベッド上の摩擦が少なくなるので効率的に力を活かせます。

⑧てこの原理を利用する
小さな力で重いものを動かすときに効果的なのがてこの原理を活用することです。てこの原理を利用するためには、力を加えるところである力点、支えるところである支点、力が働くところである作用点を作るようにしましょう。例えばベッドから車椅子への移乗介助をする際に膝をベッドにあてながら行うことで、力点(介助者)、支点(ベッドにあてた膝)、作用点(利用者さんを抱える腕)をつくることができます。

最近の移乗介助をとりまく状況を紹介しながら移乗介助の基本的な技術であるボディメカニクスについてご紹介してきました。
紹介した内容は介助者自身の身体を守ることはもちろん、結果として利用者さんの安全にもつながっていきます。移乗介助を安全に行えるようにうまく福祉機器を活用しながらボディメカニクスの技術を身につけられるようにしてみてください。

文責:有田 和弘
特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護施設などで介護職として働き、ケアマネジャーの資格取得後は特別養護老人ホームで介護度の高いご利用者への支援を中心にケアマネジメントを行う。介護業界での勤務経験は通算で10年を超える。現在は介護関係の記事作成を中心にフリーライターとして活動中。

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